
農薬に頼らない防除法<果樹>
栽培の準備段階からできる予防法
果樹栽培の準備段階から、病害虫被害を少なくする予防法です。
【土づくり】
作物がすくすくと育つための土壌には、軟らかい土と適度な養分、水分、空気が必要です。果樹は永年性作物であるため、植え付け前の土づくりが重要です。病害虫に強い健全な樹を維持するために、有機物(完熟堆肥)を投入して土づくりをしましょう。前作が果樹の場合は、できるだけその樹や根を除去しましょう。
【適地適作】
<圃場条件(排水性、日当たりなど)に応じた作目の選定>
・排水性の悪い圃場では生育が悪くなり、病気が多く発生しやすくなるので、できるだけ避けましょう。
・前作の樹が病害虫などにより枯死した跡地では、病害虫が再発する場合が多々ありますので、避けましょう。
・新しく植栽する場合は日当たりや、排水、風通しが良く、冷気のたまらない圃場を選定します。
<地域の気象に応じた品種導入>
・地域の気象条件(気温・日照・降水量など)に適した品目、品種を導入することで樹勢を維持しやすくなり、病気の発生も少なくなります。
【排水対策】
病害虫に強い健全な樹を維持するために、排水を良くします。また、圃場内の湿度が高いと、病気が発生しやすくなります。
【防風対策】
風当たりがきついと、葉や果実に傷がつき、病果、腐敗果の原因となります。また、受粉が妨げられ、実の付き方が悪くなることがあります。風除けのために、樹を植えたり、ネットを設置したりします。
【健全な苗木の選定、ウイルスフリー苗】
新しく植栽する場合は、病害虫のない健全な苗木を選ぶ必要があります(ウイルスフリー苗など)。
栽培期間中にできる予防法
以下の方法の組み合わせで、病原菌や害虫の密度を低下させ、
病害虫の発生を少なくすることができます。
【園および周辺の清掃】
草が樹の周りに生えていると、風通しなどが悪くなり病害の発生を助長します。また、害虫の発生源となるので、こまめに除草をおこないます。
【腐敗果・病枝・病葉・病果の除去】
病気や虫のついた枝や果実などは、必ず圃場外に持ち出して処分します。そのまま放置すると、翌年の伝染源になるので、圃場外に持ち出した後は、土に埋めたり、焼却などの処分を行います。枯れ枝や落ち葉も、できるだけ圃場外に持ち出します。敷きわらや固定ひもの交換も有効です。
【害虫の捕殺】
害虫やその卵塊を見つけたら、直ちに捕殺して圃場内の密度を減らします。カミキリムシなどは、樹の幹や枝に卵を産み付けるので、見つけ次第つぶします。イラガの繭やミノムシなども同様です。カイガラムシ類は、発生が少ないうちにブラシや角材ですり潰します。カミキリムシにはカミキリムシ捕虫ネットを樹幹に巻き付け、捕獲して殺します。栗では冬季にクスサンの卵塊や、郡生して越冬しているオオアブラムシを探して捕殺します。
【剪定】
適正な剪定により、風通しと日当たりを良くし、病害虫の発生を抑えることができます。冬の剪定時に、柿や栗では翌年結果する枝を、7~10本残すようにします。
【粗皮削り】
柿、ブドウ、梨では、樹が大きくなると越冬病害虫が樹皮の隙間に潜伏することが多くなります。冬季に厚い粗皮を丁寧に削って、園外に持ち出すと、翌年の病害虫の発生源を減らすことができます。
栽培期間中の資材を活用した防除法
防除目的に応じて資材を活用し、病害虫や雑草を少なくする防除方法です。
コストや労力はかかりますが、比較的、安定した効果が期待できます。
【マルチ】
土壌からの雨水の跳ね返りは、病気の発生要因となります。敷きわらなどのマルチは、跳ね返りを防ぎます。また、土壌の乾燥防止や抑草効果もあり、光を反射するマルチは、害虫の忌避効果と果実の着色向上効果が期待できます。イチジクでシルバーマルチ被覆すると、アザミウマ類、疫病の発生が少なくなります。
【防虫防鳥ネット】
鳥や夜蛾類などの虫の侵入を防ぐために、成熟期前に樹全体にネットを被覆します。例えば、夜蛾類を防ぐためには3ミリ目合のネットが必要ですが、ネットの目が細かすぎるとアブラムシや病害発生の要因となるので注意が必要です。カラスや鳩などの大型の鳥に対しては、樹上に50cm間隔に、テグスなどを張ると効果的です。
【一部被覆】
雨によって病気が発生したり、実が裂果しやすいので、雨除けのためにビニールを張りましょう(ブドウ、サクランボ、プルーン)。
【袋掛け】
果実を病害虫から守るため、袋掛けをすると効果があります(ブドウ、梨、桃、リンゴ、ビワなど)。
【光を利用した害虫防除】
黄色蛍光灯は、夜飛来し産卵する夜蛾類の忌避効果と行動抑制で、被害を抑えます。梨、桃ではヤガ類、一部のカメムシなどで効果が認められています。無袋の赤梨栽培では40W黄色蛍光灯が、10aあたり棚上2基、棚下5基必要です。園内1ルクス以上の明るさが必要です。